コラム
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2021.02.03
健康 病気 外来診療
コロナ重症化リスクのある『慢性閉塞性肺疾患(COPD)』って?
新型コロナウイルス感染症において、65歳以上の高齢者や基礎疾患のある方は重症化しやすい*1ということが多くのメディアで取り上げられていることから、コロナ禍では「3密を避ける」「手洗い」「マスク着用」などの基本的な感染予防対策はもちろん、基礎疾患の予防や治療も大切ということが、感染症対策の新常識として世界中で認識されつつあります。
皆さんは新型コロナウイルス感染症が重症化しやすい基礎疾患の一つにもなっている「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」をご存じでしょうか。通称「たばこ病」とも呼ばれ、患者さんの9割以上が喫煙者*2ともいわれています。この場合は基礎疾患の予防や治療だけでなく、「禁煙」も非常に重要と考えます。今回は慢性閉塞性肺疾患(COPD)とはどんな病気なのかについてお伝えします。
肺がんよりもずっと身近な、慢性閉塞性肺疾患(COPD)
たばこ=肺がんを連想される方が多い一方で、慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、40歳以上の推計患者数が530万人*3という試算があり、肺がんよりも身近な疾患ですが、名前自体は意外と知られていないのではないでしょうか。
慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease)とは、慢性気管支炎や肺気腫などの総称です。別名、「たばこ病」とも呼ばれています。簡単にお伝えすると、たばこの煙などの有害物質を長期間に渡り吸い込むことによって、肺に炎症がおき、気道が傷ついたり、さらには肺胞が破壊されたりすることで、呼吸がしにくくなる病気です。
「体を動かした時の息切れ」が代表的な症状となり、そのほか階段を昇る時の息切れ、長引く咳や痰、ヒューヒュー、ゼイゼイなどの呼吸は慢性閉塞性肺疾患(COPD)のわかりやすい症状です。進行すると安静時にも常に息苦しい状態が続きます。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の原因の多くは「喫煙」
前述したとおり慢性閉塞性肺疾患(COPD)と診断された方の9割以上は喫煙者*2です。たばこの煙は粒子が小さいため、肺の奥まで入り込みやすく、たばこの中に入っている有害物質(ニコチン・タール・一酸化炭素など)を長年吸い込むことによって、まず肺や気管支に炎症がおきます。すると咳や痰などの症状が続き、気管支が細くなることで空気の流れが悪くなり、息切れを感じるようになります。そして、肺を構成している「肺胞」が破壊され、酸素と二酸化炭素の入れ替えが上手くできなくなります。一度壊れた肺胞は元に戻らないため、呼吸の苦しさはずっと続くことになります。
たばこの煙は、主流煙よりも副流煙に多く含まれているため、たばこを吸わない人でも、家族がたばこを吸っていて長年一緒に暮らしていた…というだけで慢性閉塞性肺疾患(COPD)になるリスクが高くなります。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は完治できない病気。ではどうしたら?
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は進行性の病気のため、一度なってしまうと、完治することはできません。ただし早期に発見し治療を開始すれば、健康な人と変わらない生活を続けることができます。
症状に応じて、薬物療法や運動療法などの総合的な治療を行いますが、治療の第一は、禁煙です。禁煙すれば、進行を止めることは可能です。逆に禁煙を止めないと、ほぼ確実に症状は悪化します。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)が悪化すると、息苦しさが続くため自然と体を動かさなくなり家に引きこもりがちになることで、うつ病になりやすいともいわれています。咳や息苦しさから食欲がなくなるため体重が減り、体力や免疫力が低下し合併症にかかりやすくなります。また、日々の生活に支障が出るため仕事を辞めざるを得なくなる場合もあり、QOL(生活の質)が極端に落ちます。将来的に酸素療法(酸素ボンベ)が必要になり、寝たきりになることも。進行すると肺がんや、呼吸不全や心不全を起こす可能性もあります。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)はゆっくりと進行するため、気づいたときには重症化しているケースも少なくありません。そのため40歳以上の方で、20年以上喫煙習慣があり、以下に思い当たるようであれば、医療機関の受診をおすすめします。
- 風邪を引いていないのに咳や痰が続く
- 走ったり、重い荷物を運んだ時に同世代の人と比べて息切れしやすい
- 運動した時に、呼吸が引っかかるような症状がある(ヒューヒュー、ゼイゼイ)
リスクに意識を向けましょう。今こそ禁煙を。
新型コロナ感染症の重症化リスクがあるとして、慢性閉塞性肺疾患(COPD)が今まで以上に注目を浴びています。世界保健機関(WHO)も喫煙により重症化のリスクが高まるとして、禁煙を強く推奨する声明を出しています*4。
withコロナの時代といわれるように、私たちは新型コロナウィルス感染症には今後も注意を払い続ける必要があります。そして感染した場合のリスクを常に考えなければいけません。たばこを吸われる方は、この機会に禁煙を考えてみてはいかがでしょうか。
当クリニックの内科では「禁煙治療」をおこなっております。医師が身体・精神的に支え専用の薬剤を処方するなど、患者様が禁煙できるように積極的にサポートしています。禁煙に悩んでいる方は、ぜひ一度ご相談ください。
- *1:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症 COCVD-19 診療の手引き 第4版」より
https://www.kyoto.med.or.jp/covid19/pdf/14.pdf
- *2:日本医師会「すすめよう禁煙」より
http://dl.med.or.jp/dl-med/nosmoke/susumeyou.pdf
- *3:一般社団法人 日本生活習慣病予防協会より
http://www.seikatsusyukanbyo.com/statistics/disease/copd/
- *4:WHO. WHO Director-General's opening remarks at the media briefing on COVID-19
https://www.who.int/dg/speeches/detail/who-director-general-s-opening-remarks-at-the-media-briefing-on-covid-19---20-march-2020
監修者プロフィール
反頭 裕一郎 (たんどう ゆういちろう)医師
山中湖クリニック 副院長
[経歴]
2001年山梨医科大学医学部卒業
トラストクリニック等々力 元副院長
社団医療法人トラストクリニック 元非常勤医師
大月市立中央病院 元副理事長・元副院長
日本橋室町三井タワー ミッドタウンクリニック 元副院長
新型コロナウイルス感染症において、65歳以上の高齢者や基礎疾患のある方は重症化しやすい*1ということが多くのメディアで取り上げられていることから、コロナ禍では「3密を避ける」「手洗い」「マスク着用」などの基本的な感染予防対策はもちろん、基礎疾患の予防や治療も大切ということが、感染症対策の新常識として世界中で認識されつつあります。
皆さんは新型コロナウイルス感染症が重症化しやすい基礎疾患の一つにもなっている「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」をご存じでしょうか。通称「たばこ病」とも呼ばれ、患者さんの9割以上が喫煙者*2ともいわれています。この場合は基礎疾患の予防や治療だけでなく、「禁煙」も非常に重要と考えます。今回は慢性閉塞性肺疾患(COPD)とはどんな病気なのかについてお伝えします。
肺がんよりもずっと身近な、慢性閉塞性肺疾患(COPD)
たばこ=肺がんを連想される方が多い一方で、慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、40歳以上の推計患者数が530万人*3という試算があり、肺がんよりも身近な疾患ですが、名前自体は意外と知られていないのではないでしょうか。
慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease)とは、慢性気管支炎や肺気腫などの総称です。別名、「たばこ病」とも呼ばれています。簡単にお伝えすると、たばこの煙などの有害物質を長期間に渡り吸い込むことによって、肺に炎症がおき、気道が傷ついたり、さらには肺胞が破壊されたりすることで、呼吸がしにくくなる病気です。
「体を動かした時の息切れ」が代表的な症状となり、そのほか階段を昇る時の息切れ、長引く咳や痰、ヒューヒュー、ゼイゼイなどの呼吸は慢性閉塞性肺疾患(COPD)のわかりやすい症状です。進行すると安静時にも常に息苦しい状態が続きます。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の原因の多くは「喫煙」
前述したとおり慢性閉塞性肺疾患(COPD)と診断された方の9割以上は喫煙者*2です。たばこの煙は粒子が小さいため、肺の奥まで入り込みやすく、たばこの中に入っている有害物質(ニコチン・タール・一酸化炭素など)を長年吸い込むことによって、まず肺や気管支に炎症がおきます。すると咳や痰などの症状が続き、気管支が細くなることで空気の流れが悪くなり、息切れを感じるようになります。そして、肺を構成している「肺胞」が破壊され、酸素と二酸化炭素の入れ替えが上手くできなくなります。一度壊れた肺胞は元に戻らないため、呼吸の苦しさはずっと続くことになります。
たばこの煙は、主流煙よりも副流煙に多く含まれているため、たばこを吸わない人でも、家族がたばこを吸っていて長年一緒に暮らしていた…というだけで慢性閉塞性肺疾患(COPD)になるリスクが高くなります。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は完治できない病気。ではどうしたら?
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は進行性の病気のため、一度なってしまうと、完治することはできません。ただし早期に発見し治療を開始すれば、健康な人と変わらない生活を続けることができます。
症状に応じて、薬物療法や運動療法などの総合的な治療を行いますが、治療の第一は、禁煙です。禁煙すれば、進行を止めることは可能です。逆に禁煙を止めないと、ほぼ確実に症状は悪化します。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)が悪化すると、息苦しさが続くため自然と体を動かさなくなり家に引きこもりがちになることで、うつ病になりやすいともいわれています。咳や息苦しさから食欲がなくなるため体重が減り、体力や免疫力が低下し合併症にかかりやすくなります。また、日々の生活に支障が出るため仕事を辞めざるを得なくなる場合もあり、QOL(生活の質)が極端に落ちます。将来的に酸素療法(酸素ボンベ)が必要になり、寝たきりになることも。進行すると肺がんや、呼吸不全や心不全を起こす可能性もあります。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)はゆっくりと進行するため、気づいたときには重症化しているケースも少なくありません。そのため40歳以上の方で、20年以上喫煙習慣があり、以下に思い当たるようであれば、医療機関の受診をおすすめします。
- 風邪を引いていないのに咳や痰が続く
- 走ったり、重い荷物を運んだ時に同世代の人と比べて息切れしやすい
- 運動した時に、呼吸が引っかかるような症状がある(ヒューヒュー、ゼイゼイ)
リスクに意識を向けましょう。今こそ禁煙を。
新型コロナ感染症の重症化リスクがあるとして、慢性閉塞性肺疾患(COPD)が今まで以上に注目を浴びています。世界保健機関(WHO)も喫煙により重症化のリスクが高まるとして、禁煙を強く推奨する声明を出しています*4。
withコロナの時代といわれるように、私たちは新型コロナウィルス感染症には今後も注意を払い続ける必要があります。そして感染した場合のリスクを常に考えなければいけません。たばこを吸われる方は、この機会に禁煙を考えてみてはいかがでしょうか。
当クリニックの内科では「禁煙治療」をおこなっております。医師が身体・精神的に支え専用の薬剤を処方するなど、患者様が禁煙できるように積極的にサポートしています。禁煙に悩んでいる方は、ぜひ一度ご相談ください。
- *1:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症 COCVD-19 診療の手引き 第4版」より
https://www.kyoto.med.or.jp/covid19/pdf/14.pdf - *2:日本医師会「すすめよう禁煙」より
http://dl.med.or.jp/dl-med/nosmoke/susumeyou.pdf - *3:一般社団法人 日本生活習慣病予防協会より
http://www.seikatsusyukanbyo.com/statistics/disease/copd/ - *4:WHO. WHO Director-General's opening remarks at the media briefing on COVID-19
https://www.who.int/dg/speeches/detail/who-director-general-s-opening-remarks-at-the-media-briefing-on-covid-19---20-march-2020
監修者プロフィール
反頭 裕一郎 (たんどう ゆういちろう)医師
山中湖クリニック 副院長
[経歴]
2001年山梨医科大学医学部卒業
トラストクリニック等々力 元副院長
社団医療法人トラストクリニック 元非常勤医師
大月市立中央病院 元副理事長・元副院長
日本橋室町三井タワー ミッドタウンクリニック 元副院長
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