コラム
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2021.05.07
健康 病気 人間ドック・健診
AST・ALT・γ-GTP…あなたの数値は大丈夫? 肝機能検査に注目!
肝機能異常は、健診や人間ドックで比較的指摘されることが多い検査ですが「お酒を飲んでいるせいだろう」と再検査を受ける必要はないと考えてしまう方が多いようです。肝機能異常があるときにはどのような原因であっても禁酒により肝臓を休めることが重要ですが、原因はお酒だけではありません。ウイルスや薬剤による肝障害のほか、ほとんどアルコールを飲まない人にも非アルコール性脂肪性肝疾患や肝炎(NAFLDナッフルディー/NASHナッシュ)による肝障害が最近増えています。また、自分の肝臓を敵と間違えて攻撃してしまう自己免疫性肝炎なども肝機能異常の原因となります。
健診や人間ドックはただ受けるだけではなく、異常が見つかった時に適切な対策を行うことが重要です。そこで今回は、中高年以降に現れやすい肝機能異常について解説します。健診や人間ドックで肝機能の数値に異常があった方はぜひ参考にしてください。
知っていますか?肝臓の働き
アルコールを解毒する作用は肝臓が担っていることを知っている方も多いかと思いますが、それだけではありません。肝臓には主に3つの働きがあります。
①身体に必要な栄養の合成や貯蔵
肝臓は、食べた物を栄養素としてきちんと利用しやすい状態に変化をさせて貯え、必要なときに血液の中に送り出す働きをしています。例えば炭水化物は、ブドウ糖として小腸から吸収され、肝臓に運び込まれます。肝臓ではブドウ糖はグリコーゲンの形で貯えられ、必要に応じて体内に送り出されます。体を動かすエネルギー源であるブドウ糖は脳に送られなくなると数分で脳の働きは止まってしまうのです。また、肝臓はタンパク質の合成も担っています。
②解毒作用
アンモニアなどの有害物質や、アルコール、薬剤などを分解し、毒性の低い物質に変えて排出するという解毒作用の働きをしています。肝臓の働きが悪くなって十分な解毒作用が行われなくなると、体内に有害な物質がどんどん蓄積されてしまいます。結果として有害物質が脳まで運ばれ脳機能が低下し脳症など、より深刻な症状が現れます。
③胆汁の生成・分泌
肝臓は、脂肪やタンパク質の消化・吸収に必要な「胆汁」を生成・分泌する働きも担っています。また、血中のコレステロール濃度を調整するという働きもあります。肝臓や胆道に障害が起こり胆汁の流れが悪くなると、血液中にビリルビンという色素が増え、白目や皮膚が黄色くなる黄疸(おうだん)がでることもあります。
肝臓は、多少のダメージでは症状が現れにくいため「沈黙の臓器」と呼ばれています。そのため、自覚症状がでた時にはかなり病状が進行していることが多いのです。そこで重要なのが健診や人間ドックでおこなう「血液検査」です。肝臓の機能異常は自覚症状がない場合でも血液検査の結果に反映されやすいため、年に一度は血液検査で肝臓の状態をチェックしましょう。
血液検査で何が分かる?どんな病気の可能性が?
AST(GOT)・ALT(GPT)
ASTとALTは肝臓の機能を調べるための代表的な検査項目です。肝臓に何らかのダメージが加わって細胞が破壊されると、血液中にこのASTとALTが大量に放出されるため、血中濃度が上昇します。このことから、ASTとALTの数値が高い場合、肝臓が破壊されていることがわかります。ただし、肝硬変など肝臓の状態が悪いと壊れる細胞が残されていないために肝臓が悪くても上昇しない場合もあります。
ASTは肝臓以外に筋肉や赤血球中にも存在するため、ALTが正常でASTのみが上昇している場合は肝臓以外が原因の可能性があります。
γ-GTP
γ-GTPは肝臓の解毒作用に関係する酵素で、肝臓疾患のほか、胆道や膵臓の疾患でも上昇することがあります。胆道系疾患の場合にはALP(アルカリホスファターゼ)も一緒に上昇することが多いです。また、γ-GTPはお酒の飲み過ぎや最近増えている非アルコール性脂肪性肝疾患や肝炎(NAFLDナッフルディー/NASHナッシュ)によっても上昇する性質があるため、肝障害を発見するきっかけにもなります。
肝機能異常が見つかったら
健診で肝機能異常が見つかった場合に、次に行う検査は主に血液検査と画像検査(超音波検査やMRI検査など)です。血液検査では一度異常がみられた肝機能が改善しているか悪化しているかに加えて、B型・C型肝炎などの感染のチェックや自己免疫性疾患がないかどうかの自己抗体の検査を行います。また、脂肪肝・胆石・肝硬変・肝臓がんなどがないか画像による検査も行います。
健診や人間ドックで肝機能の数値に異常があったにも関わらず放置してしまっている方、しばらく健診や人間ドックを受けていないため肝臓の状態を把握していない方は現状を把握するためにも一度、当クリニックへご相談ください。
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●外来診療はこちら>
監修者プロフィール
畑 啓介 (はた けいすけ)
日本橋室町三井タワー ミッドタウンクリニック院長
東京大学医学部 非常勤講師
【経歴】
1996年 東京大学医学部卒業
2005年 東京大学医学部博士課程修了
内閣府宮内庁 侍従職元侍医
東京大学医学部附属病院腫瘍外科・がんプロフェッショナル養成プラン 元特任講師
【認定資格】
日本外科学会 外科専門医
日本大腸肛門病学会 大腸肛門病専門医・指導医
日本消化器病学会 消化器病専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医・指導医・関東支部評議員
日本消化管学会 胃腸科専門医
日本人間ドック学会 認定医
肝機能異常は、健診や人間ドックで比較的指摘されることが多い検査ですが「お酒を飲んでいるせいだろう」と再検査を受ける必要はないと考えてしまう方が多いようです。肝機能異常があるときにはどのような原因であっても禁酒により肝臓を休めることが重要ですが、原因はお酒だけではありません。ウイルスや薬剤による肝障害のほか、ほとんどアルコールを飲まない人にも非アルコール性脂肪性肝疾患や肝炎(NAFLDナッフルディー/NASHナッシュ)による肝障害が最近増えています。また、自分の肝臓を敵と間違えて攻撃してしまう自己免疫性肝炎なども肝機能異常の原因となります。
健診や人間ドックはただ受けるだけではなく、異常が見つかった時に適切な対策を行うことが重要です。そこで今回は、中高年以降に現れやすい肝機能異常について解説します。健診や人間ドックで肝機能の数値に異常があった方はぜひ参考にしてください。
知っていますか?肝臓の働き
アルコールを解毒する作用は肝臓が担っていることを知っている方も多いかと思いますが、それだけではありません。肝臓には主に3つの働きがあります。
①身体に必要な栄養の合成や貯蔵
肝臓は、食べた物を栄養素としてきちんと利用しやすい状態に変化をさせて貯え、必要なときに血液の中に送り出す働きをしています。例えば炭水化物は、ブドウ糖として小腸から吸収され、肝臓に運び込まれます。肝臓ではブドウ糖はグリコーゲンの形で貯えられ、必要に応じて体内に送り出されます。体を動かすエネルギー源であるブドウ糖は脳に送られなくなると数分で脳の働きは止まってしまうのです。また、肝臓はタンパク質の合成も担っています。
②解毒作用
アンモニアなどの有害物質や、アルコール、薬剤などを分解し、毒性の低い物質に変えて排出するという解毒作用の働きをしています。肝臓の働きが悪くなって十分な解毒作用が行われなくなると、体内に有害な物質がどんどん蓄積されてしまいます。結果として有害物質が脳まで運ばれ脳機能が低下し脳症など、より深刻な症状が現れます。
③胆汁の生成・分泌
肝臓は、脂肪やタンパク質の消化・吸収に必要な「胆汁」を生成・分泌する働きも担っています。また、血中のコレステロール濃度を調整するという働きもあります。肝臓や胆道に障害が起こり胆汁の流れが悪くなると、血液中にビリルビンという色素が増え、白目や皮膚が黄色くなる黄疸(おうだん)がでることもあります。
肝臓は、多少のダメージでは症状が現れにくいため「沈黙の臓器」と呼ばれています。そのため、自覚症状がでた時にはかなり病状が進行していることが多いのです。そこで重要なのが健診や人間ドックでおこなう「血液検査」です。肝臓の機能異常は自覚症状がない場合でも血液検査の結果に反映されやすいため、年に一度は血液検査で肝臓の状態をチェックしましょう。
血液検査で何が分かる?どんな病気の可能性が?
AST(GOT)・ALT(GPT)
ASTとALTは肝臓の機能を調べるための代表的な検査項目です。肝臓に何らかのダメージが加わって細胞が破壊されると、血液中にこのASTとALTが大量に放出されるため、血中濃度が上昇します。このことから、ASTとALTの数値が高い場合、肝臓が破壊されていることがわかります。ただし、肝硬変など肝臓の状態が悪いと壊れる細胞が残されていないために肝臓が悪くても上昇しない場合もあります。
ASTは肝臓以外に筋肉や赤血球中にも存在するため、ALTが正常でASTのみが上昇している場合は肝臓以外が原因の可能性があります。
γ-GTP
γ-GTPは肝臓の解毒作用に関係する酵素で、肝臓疾患のほか、胆道や膵臓の疾患でも上昇することがあります。胆道系疾患の場合にはALP(アルカリホスファターゼ)も一緒に上昇することが多いです。また、γ-GTPはお酒の飲み過ぎや最近増えている非アルコール性脂肪性肝疾患や肝炎(NAFLDナッフルディー/NASHナッシュ)によっても上昇する性質があるため、肝障害を発見するきっかけにもなります。
肝機能異常が見つかったら
健診で肝機能異常が見つかった場合に、次に行う検査は主に血液検査と画像検査(超音波検査やMRI検査など)です。血液検査では一度異常がみられた肝機能が改善しているか悪化しているかに加えて、B型・C型肝炎などの感染のチェックや自己免疫性疾患がないかどうかの自己抗体の検査を行います。また、脂肪肝・胆石・肝硬変・肝臓がんなどがないか画像による検査も行います。
健診や人間ドックで肝機能の数値に異常があったにも関わらず放置してしまっている方、しばらく健診や人間ドックを受けていないため肝臓の状態を把握していない方は現状を把握するためにも一度、当クリニックへご相談ください。
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監修者プロフィール
畑 啓介 (はた けいすけ)
日本橋室町三井タワー ミッドタウンクリニック院長
東京大学医学部 非常勤講師
【経歴】
1996年 東京大学医学部卒業
2005年 東京大学医学部博士課程修了
内閣府宮内庁 侍従職元侍医
東京大学医学部附属病院腫瘍外科・がんプロフェッショナル養成プラン 元特任講師
【認定資格】
日本外科学会 外科専門医
日本大腸肛門病学会 大腸肛門病専門医・指導医
日本消化器病学会 消化器病専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医・指導医・関東支部評議員
日本消化管学会 胃腸科専門医
日本人間ドック学会 認定医
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