コラム
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2020.06.23
健康
最近、気になる体重増加・・・食事の摂り方ってどうしたらいいの?
外出を控えた生活が続き家の中で過ごすことが多かったせいか、最近体重の増加が気になっている方も多いと思います。そこで、「おすすめの食事の摂り方」や「間食の摂取法」などをご紹介します。
外出自粛生活で起こる体重増加の原因
通勤や買い物・外食・運動などの外出といった生活を当たり前のように送っていた私たちは、「外出自粛」により生活が一変しました。外出を控え家の中で過ごすことが多くなり、運動量が減少した方もいらっしゃるのではないでしょうか。
運動量が減った分、バランスの良い食生活を心がけようと思いつつ、好きなものを好きな時間に食べてしまい、食事の時間を決めずに仕事をしながらダラダラと食べてしまう・・という方や、毎日3食きちんと食べることに加えてテレワークの合間についつい間食を多く摂ってしまった・・という方もいらっしゃると思います。
日々の食事や運動といった生活習慣が乱れてしまうと、摂取カロリー>消費カロリーとなり、過剰なエネルギーは脂肪に蓄積されます。その結果として体重は増加します。
今回は「摂取カロリー」にフォーカスを当てて、日々の食事や間食の摂り方についてお話させていただきます。
【おすすめの食事の摂り方】
1.我が家はいつでも会席料理!
食べる順番として「野菜、海藻、きのこなど」→「タンパク質(肉、魚など)」→「炭水化物(ごはんなど)」という、会席料理で出される順で食べるのがおすすめです。
最初に野菜などに含まれる食物繊維を摂取することによって、糖質の消化吸収が緩やかになったり、コレステロールやナトリウムが吸着されたりするため、食後の高血糖が抑制され、コレステロール値が改善し、降圧作用も期待できることが知られています。それだけでなく、水溶性食物繊維は大腸内で腸内細菌により発酵し、酪酸、プロピオン酸などの短鎖脂肪酸を合成して腸内環境をよくする整腸作用を有します。不溶性食物繊維は保水性が高く、便秘を防ぐ作用もあります。
また、炭水化物を摂取する前に脂肪酸などの栄養素が吸収されることで、インスリン量や作用を増強させるホルモンが消化管から分泌され、これによっても炭水化物による食後すぐの血糖上昇も抑制されます。
2.適正エネルギー量について
ここで、適正エネルギー摂取量を以下の計算式で計算してみましょう。
★適正エネルギー摂取量=標準体重×身体活動量
*小児や思春期は除く
*標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22
*身体活動量の目安
・軽労作(デスクワークが多い場合)・・25~30kcal/kg標準体重
・普通の労作(立ち仕事が多い場合)・・30~35kcal/kg標準体重
・重い労作(力仕事が多い場合)・・・・35kcal以上/kg標準体重
(・肥満症 ・・・・25kcal/kg標準体重)
一日の総カロリー量が同じでも、「朝食抜きの2食」の場合と「3食」の場合では、「3食」の方が体重増加が抑制され糖尿病の方では血糖コントロールが良かった、という研究結果があります。朝食は抜かないで、各食事で1日エネルギー摂取量のだいたい1/3ずつを摂れるようにするのが望ましいです。できれば朝食、昼食で多めに摂って、夕食は少な目が理想的です。
なお、炭水化物とタンパク質は1gは4kcal、脂質は9kcalですので、例えばごはんの量を減らして空腹感を埋めるためにから揚げを食べては、総カロリーはかえって高くなりますので、注意してください。
3.満腹感を得られるように工夫を
ゆっくりよくかんで味わいましょう。食物繊維を含む食材はよく噛まなければ食べられない場合が多く、「よく噛むこと」により唾液や胃液の分泌が促進され、胃内で食べ物が膨張し、食物の胃内の滞留時間が延長します。その結果、満腹感が得られることにつながります。
皿数を増やし見た目もボリューム感を持たせる、というのも一つです。骨や殻付きの食材を使用すると、ボリューム感を出すことができますし、食べる速度も遅くなります。そうすると、「早食いで満腹中枢が刺激される前に食べすぎてしまうこと」を防ぐことができて、肥満抑制にもつながります。
4.食材の工夫を
食品の種類はなるべく多くして、少しでもバランスの取れた食品構成になることを目指しましょう。
一般的には総エネルギー量の50~60%を炭水化物、食物繊維が豊富な食物を選択します。タンパク質は総エネルギー量の20%まで(標準体重1kgあたり1.0~1.2g程度)として、残りを脂質としますが、脂質が25%を超える場合は飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を減らすように意識しましょう。飽和脂肪酸は動物性の脂に多く含まれ、悪玉(LDL)コレステロールを増やします。トランス脂肪酸は工業的な水素添加によって、液状の不飽和脂肪酸を固形の飽和脂肪酸に変換する際に生じます。日本ではまだ多くの食品(パン、ケーキ、スナック菓子など)に添加されており、摂取量と冠動脈疾患発症には相関関係があり、注意が必要です。
食材としては、肉は脂身の少ない部位(ひれ、ささみ、赤身)を選ぶようにし、牛肉や豚肉より鶏肉とすると脂肪量が少なくカロリーも減らせます。良質な脂肪(n-3系多価不飽和脂肪酸)を含む魚は積極的に取り入れましょう。n-3系脂肪酸により中性脂肪の合成が抑制され血中の中性脂肪値が低下します。
アルコールは1日25g程度までにしましょう。高中性脂肪血症の方の場合は、アルコール、飽和脂肪酸、砂糖、炭水化物、果物の取りすぎに注意しましょう。食物繊維は1日20g以上摂取することをお勧めします。野菜は1日350g以上が目標です。高血圧の方の場合は塩分摂取量として1日6g未満を意識してみましょう。腎機能障害、尿たんぱく陽性の方の場合は塩分を控えるだけでなく、タンパク質の摂取量にも注意が必要です。主治医にご相談ください。
5.食べ方の工夫を
☑ 腹八分で一旦食事をやめてみましょう。
☑ 満腹感を意識できるよう、よく噛み、ゆっくり食べるようにしてみましょう。
☑ 他のことをしながらの「ながら食べ」をやめましょう。
☑ 大皿から料理を取って食べると食べた量が分からず多くなりがちなので、一人分のお皿にあらかじめ分けておき、それ以上食べないようにしましょう。
【どうしてもやめられない「間食」は選んで摂取!】
間食を全部やめなければ、と考えると、かえってストレスになります。時には「心の栄養」が必要ですよね。できれば食事時間以外のおやつではなく、ランチ直後のデザートとして摂取するのがおすすめです。単純糖質を多く含む食品はなるべく避けるのも一つですし、間食は日々の生活で不足している栄養素を補うものとして選ぶというのも一つです。たとえば食事だけでは不足しがちな食物繊維は野菜スティックで、カルシウムは小魚、ビタミンやミネラルはナッツ類などにするのもお勧めです。
★口寂しいときは・・・ナッツ(1日の目安量は手のひらに収まる量以内で)
★濃厚な甘さが欲しいときは・・・ハイカカオチョコレート(1日1/3枚、15-20gを目安に)
★甘いものが欲しいときは・・・こんにゃくゼリー(食物繊維も補給できる)
【そのほか】
できることからまず初めてみませんか。そして、やりすぎないことも大切です。
肥満がある方の場合は、まず3-5%の体重減少を目標とし、毎朝起床時に体重測定をお勧めします。それだけでも、血圧、脂質、血糖のプロファイルが改善することが知られています。
2日に1度、-0.1kg (つまり-100g)となるようなペースで体重が減っていくようにすると、2か月で3kg体重が減る計算になります。生活習慣を見直すのは大変なことですが、「今週はこれをやってみる」と何か一つ、まず始めてみられてはいかがでしょうか。
体重増加が健康にもたらす影響は、高血圧や糖尿病、がんやアルツハイマー型認知症などなど思ってる以上にリスクあります。ご自身の状態を確認するためにも年に一度の人間ドックや健康診断はおこなうようにしてください。日本橋室町三井タワー ミッドタウンクリニックでは様々な検査ニーズに合わせた「人間ドック・健康診断」を用意しています。ぜひご覧ください。
監修者プロフィール
荒井 美乃(あらい よしの)
日本橋室町三井タワー ミッドタウンクリニック 常勤医師 [医学博士・獣医師]
合併症予防という目標に向かって、患者さんとスタッフ一同、一緒に治療していけるような糖尿病外来を目指しています。
【認定資格】
日本糖尿病学会 糖尿病専門医
日本内科学会 総合内科専門医
<参考>
日本糖尿病学会 編・著 糖尿病治療ガイド2018-2019
日本動脈硬化学会 動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2018年版
日本糖尿病学会 編 科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013
日本糖尿病学会 編・著 糖尿病食事療法のための食品交換表 第7版
外出を控えた生活が続き家の中で過ごすことが多かったせいか、最近体重の増加が気になっている方も多いと思います。そこで、「おすすめの食事の摂り方」や「間食の摂取法」などをご紹介します。
外出自粛生活で起こる体重増加の原因
通勤や買い物・外食・運動などの外出といった生活を当たり前のように送っていた私たちは、「外出自粛」により生活が一変しました。外出を控え家の中で過ごすことが多くなり、運動量が減少した方もいらっしゃるのではないでしょうか。
運動量が減った分、バランスの良い食生活を心がけようと思いつつ、好きなものを好きな時間に食べてしまい、食事の時間を決めずに仕事をしながらダラダラと食べてしまう・・という方や、毎日3食きちんと食べることに加えてテレワークの合間についつい間食を多く摂ってしまった・・という方もいらっしゃると思います。
日々の食事や運動といった生活習慣が乱れてしまうと、摂取カロリー>消費カロリーとなり、過剰なエネルギーは脂肪に蓄積されます。その結果として体重は増加します。
今回は「摂取カロリー」にフォーカスを当てて、日々の食事や間食の摂り方についてお話させていただきます。
【おすすめの食事の摂り方】
1.我が家はいつでも会席料理!
食べる順番として「野菜、海藻、きのこなど」→「タンパク質(肉、魚など)」→「炭水化物(ごはんなど)」という、会席料理で出される順で食べるのがおすすめです。
最初に野菜などに含まれる食物繊維を摂取することによって、糖質の消化吸収が緩やかになったり、コレステロールやナトリウムが吸着されたりするため、食後の高血糖が抑制され、コレステロール値が改善し、降圧作用も期待できることが知られています。それだけでなく、水溶性食物繊維は大腸内で腸内細菌により発酵し、酪酸、プロピオン酸などの短鎖脂肪酸を合成して腸内環境をよくする整腸作用を有します。不溶性食物繊維は保水性が高く、便秘を防ぐ作用もあります。
また、炭水化物を摂取する前に脂肪酸などの栄養素が吸収されることで、インスリン量や作用を増強させるホルモンが消化管から分泌され、これによっても炭水化物による食後すぐの血糖上昇も抑制されます。
2.適正エネルギー量について
ここで、適正エネルギー摂取量を以下の計算式で計算してみましょう。
★適正エネルギー摂取量=標準体重×身体活動量
*小児や思春期は除く
*標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22
*身体活動量の目安
・軽労作(デスクワークが多い場合)・・25~30kcal/kg標準体重
・普通の労作(立ち仕事が多い場合)・・30~35kcal/kg標準体重
・重い労作(力仕事が多い場合)・・・・35kcal以上/kg標準体重
(・肥満症 ・・・・25kcal/kg標準体重)
一日の総カロリー量が同じでも、「朝食抜きの2食」の場合と「3食」の場合では、「3食」の方が体重増加が抑制され糖尿病の方では血糖コントロールが良かった、という研究結果があります。朝食は抜かないで、各食事で1日エネルギー摂取量のだいたい1/3ずつを摂れるようにするのが望ましいです。できれば朝食、昼食で多めに摂って、夕食は少な目が理想的です。 なお、炭水化物とタンパク質は1gは4kcal、脂質は9kcalですので、例えばごはんの量を減らして空腹感を埋めるためにから揚げを食べては、総カロリーはかえって高くなりますので、注意してください。
3.満腹感を得られるように工夫を
ゆっくりよくかんで味わいましょう。食物繊維を含む食材はよく噛まなければ食べられない場合が多く、「よく噛むこと」により唾液や胃液の分泌が促進され、胃内で食べ物が膨張し、食物の胃内の滞留時間が延長します。その結果、満腹感が得られることにつながります。
皿数を増やし見た目もボリューム感を持たせる、というのも一つです。骨や殻付きの食材を使用すると、ボリューム感を出すことができますし、食べる速度も遅くなります。そうすると、「早食いで満腹中枢が刺激される前に食べすぎてしまうこと」を防ぐことができて、肥満抑制にもつながります。
4.食材の工夫を
食品の種類はなるべく多くして、少しでもバランスの取れた食品構成になることを目指しましょう。
一般的には総エネルギー量の50~60%を炭水化物、食物繊維が豊富な食物を選択します。タンパク質は総エネルギー量の20%まで(標準体重1kgあたり1.0~1.2g程度)として、残りを脂質としますが、脂質が25%を超える場合は飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を減らすように意識しましょう。飽和脂肪酸は動物性の脂に多く含まれ、悪玉(LDL)コレステロールを増やします。トランス脂肪酸は工業的な水素添加によって、液状の不飽和脂肪酸を固形の飽和脂肪酸に変換する際に生じます。日本ではまだ多くの食品(パン、ケーキ、スナック菓子など)に添加されており、摂取量と冠動脈疾患発症には相関関係があり、注意が必要です。
食材としては、肉は脂身の少ない部位(ひれ、ささみ、赤身)を選ぶようにし、牛肉や豚肉より鶏肉とすると脂肪量が少なくカロリーも減らせます。良質な脂肪(n-3系多価不飽和脂肪酸)を含む魚は積極的に取り入れましょう。n-3系脂肪酸により中性脂肪の合成が抑制され血中の中性脂肪値が低下します。
アルコールは1日25g程度までにしましょう。高中性脂肪血症の方の場合は、アルコール、飽和脂肪酸、砂糖、炭水化物、果物の取りすぎに注意しましょう。食物繊維は1日20g以上摂取することをお勧めします。野菜は1日350g以上が目標です。高血圧の方の場合は塩分摂取量として1日6g未満を意識してみましょう。腎機能障害、尿たんぱく陽性の方の場合は塩分を控えるだけでなく、タンパク質の摂取量にも注意が必要です。主治医にご相談ください。
5.食べ方の工夫を
☑ 腹八分で一旦食事をやめてみましょう。
☑ 満腹感を意識できるよう、よく噛み、ゆっくり食べるようにしてみましょう。
☑ 他のことをしながらの「ながら食べ」をやめましょう。
☑ 大皿から料理を取って食べると食べた量が分からず多くなりがちなので、一人分のお皿にあらかじめ分けておき、それ以上食べないようにしましょう。
【どうしてもやめられない「間食」は選んで摂取!】
間食を全部やめなければ、と考えると、かえってストレスになります。時には「心の栄養」が必要ですよね。できれば食事時間以外のおやつではなく、ランチ直後のデザートとして摂取するのがおすすめです。単純糖質を多く含む食品はなるべく避けるのも一つですし、間食は日々の生活で不足している栄養素を補うものとして選ぶというのも一つです。たとえば食事だけでは不足しがちな食物繊維は野菜スティックで、カルシウムは小魚、ビタミンやミネラルはナッツ類などにするのもお勧めです。
★口寂しいときは・・・ナッツ(1日の目安量は手のひらに収まる量以内で)
★濃厚な甘さが欲しいときは・・・ハイカカオチョコレート(1日1/3枚、15-20gを目安に)
★甘いものが欲しいときは・・・こんにゃくゼリー(食物繊維も補給できる)
【そのほか】
できることからまず初めてみませんか。そして、やりすぎないことも大切です。
肥満がある方の場合は、まず3-5%の体重減少を目標とし、毎朝起床時に体重測定をお勧めします。それだけでも、血圧、脂質、血糖のプロファイルが改善することが知られています。
2日に1度、-0.1kg (つまり-100g)となるようなペースで体重が減っていくようにすると、2か月で3kg体重が減る計算になります。生活習慣を見直すのは大変なことですが、「今週はこれをやってみる」と何か一つ、まず始めてみられてはいかがでしょうか。
体重増加が健康にもたらす影響は、高血圧や糖尿病、がんやアルツハイマー型認知症などなど思ってる以上にリスクあります。ご自身の状態を確認するためにも年に一度の人間ドックや健康診断はおこなうようにしてください。日本橋室町三井タワー ミッドタウンクリニックでは様々な検査ニーズに合わせた「人間ドック・健康診断」を用意しています。ぜひご覧ください。
監修者プロフィール
荒井 美乃(あらい よしの)
日本橋室町三井タワー ミッドタウンクリニック 常勤医師 [医学博士・獣医師]
合併症予防という目標に向かって、患者さんとスタッフ一同、一緒に治療していけるような糖尿病外来を目指しています。
【認定資格】
日本糖尿病学会 糖尿病専門医
日本内科学会 総合内科専門医
<参考>
日本糖尿病学会 編・著 糖尿病治療ガイド2018-2019
日本動脈硬化学会 動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2018年版
日本糖尿病学会 編 科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013
日本糖尿病学会 編・著 糖尿病食事療法のための食品交換表 第7版
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