コラム
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2020.09.01
健康
肩に強い痛み・・これって五十肩?
肩を動かすと痛い、腕が上がらない・・そんな症状がある人は、もしかしたら「五十肩」(肩関節周囲炎)かもしれません。そのうち治るだろうと放置すると肩が動かなくなるなど後遺症が残ることもあります。五十肩とは一体どんな病気なのでしょうか。今回は中高年以降に多い五十肩についてお話します。
五十肩とは?
五十肩とは中年以降の40~70代に好発する、「肩関節周囲炎」のことです。肩関節の周りの炎症による痛みやそれによる動きの制限などが、一般に五十肩とよばれています。40代で発症すると、四十肩とも呼びます。
五十肩は発症から回復までに通常は半年から9ヶ月、長いと3年ほどかかる場合があります。病気の期間は3つに分けられています。発症から約2週間が急性期、その後の約半年間が慢性期、そして回復期になります。
病態は肩関節の滑膜の炎症と関節包の線維化ですが、原因についてはまだよくわかっていません。
急性期には夜中に眠れないほどズキズキと痛いこともあります。服を着るのに腕を上げる時、背中のファスナーを上げる時、電車のつり革につかまる時、髪を洗う時など、腕を上にあげたり、腕を後ろに回転させたりすると、強い痛みが出ます。肩関節の動きをよくする関節包という組織が炎症後に癒着すると、動きの制限や運動時の痛みが出ます。英語ではfrozen shoulder(凍結肩)と呼ばれています。慢性期に適切なリハビリテーション(リハビリ)を行い、動かせる範囲を増やしていきます。
もしかしたら五十肩かも。どこに相談すればよい?
肩の痛みが出たら、整形外科を受診します。X線検査(レントゲン)等で五十肩以外の疾患の除外や重症度の診断をしてもらい、リハビリの指示を受けましょう。病期に応じた適切なリハビリを行わないと運動制限が治らない場合がありますし、重症例では手術が必要になることがあります。
糖尿病・高血圧症・脂質異常症などがある方や高齢の方は心臓病でないかどうかの診断も必要
心臓の血管が動脈硬化で狭くなったり、血栓で詰まったりして心臓が虚血になる「狭心症」や「心筋梗塞」でも、典型的な胸の痛み以外に、肩に痛みが出る場合があります。糖尿病、高血圧、脂質異常症、喫煙などの動脈硬化の危険因子がある方、高齢の方は、かかりつけ医や内科医にまず相談し、心臓に起因する痛みでないかどうか、診てもらいましょう。
五十肩を予防するには?
五十肩の危険因子として、糖尿病、脂質異常症、甲状腺疾患、デスクワークなどが挙げられており、運動不足の関与があると考えられています。40-50代以降の運動不足は、生活習慣病*やロコモーティブ・シンドローム**にも繋がっていきます。生活習慣を見直し、運動習慣をつけるようにしましょう。
*生活習慣病:食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣がその発症に関与する症候群(がん・心臓病・脳卒中・糖尿病・COPD(慢性閉塞性肺疾患)など)を指す。日本人の死因の約6割を占めている。
**ロコモーティブシンドローム:筋肉・骨格など運動器の障害(筋力低下、骨粗鬆症、骨折など)により、要介護になるリスクの高い状態になること。
執筆者
半下石 美佐子(はんがいし みさこ)
日本橋室町三井タワー ミッドタウンクリニック 内科・循環器内科医師
筑波大学医学専門学群卒業。横須賀米海軍病院インターン、東京大学第一内科研修ののち、東京大学第一内科入局。国立国際医療センター循環器レジデント修了後、東京大学第一内科および東京大学循環器内科助手として臨床と研究に従事。2000年より三菱電機本社診療所副所長、2014年三菱電機本社健康増進センター長。2020年4月より日本橋室町三井タワー ミッドタウンクリニック勤務。
【認定資格】
日本内科学会 総合内科専門医
日本循環器学会 循環器専門医
日本東洋医学会 漢方専門医
日本医師会 認定産業医
肩を動かすと痛い、腕が上がらない・・そんな症状がある人は、もしかしたら「五十肩」(肩関節周囲炎)かもしれません。そのうち治るだろうと放置すると肩が動かなくなるなど後遺症が残ることもあります。五十肩とは一体どんな病気なのでしょうか。今回は中高年以降に多い五十肩についてお話します。
五十肩とは?
五十肩とは中年以降の40~70代に好発する、「肩関節周囲炎」のことです。肩関節の周りの炎症による痛みやそれによる動きの制限などが、一般に五十肩とよばれています。40代で発症すると、四十肩とも呼びます。 五十肩は発症から回復までに通常は半年から9ヶ月、長いと3年ほどかかる場合があります。病気の期間は3つに分けられています。発症から約2週間が急性期、その後の約半年間が慢性期、そして回復期になります。 病態は肩関節の滑膜の炎症と関節包の線維化ですが、原因についてはまだよくわかっていません。 急性期には夜中に眠れないほどズキズキと痛いこともあります。服を着るのに腕を上げる時、背中のファスナーを上げる時、電車のつり革につかまる時、髪を洗う時など、腕を上にあげたり、腕を後ろに回転させたりすると、強い痛みが出ます。肩関節の動きをよくする関節包という組織が炎症後に癒着すると、動きの制限や運動時の痛みが出ます。英語ではfrozen shoulder(凍結肩)と呼ばれています。慢性期に適切なリハビリテーション(リハビリ)を行い、動かせる範囲を増やしていきます。
もしかしたら五十肩かも。どこに相談すればよい?
肩の痛みが出たら、整形外科を受診します。X線検査(レントゲン)等で五十肩以外の疾患の除外や重症度の診断をしてもらい、リハビリの指示を受けましょう。病期に応じた適切なリハビリを行わないと運動制限が治らない場合がありますし、重症例では手術が必要になることがあります。
糖尿病・高血圧症・脂質異常症などがある方や高齢の方は心臓病でないかどうかの診断も必要
心臓の血管が動脈硬化で狭くなったり、血栓で詰まったりして心臓が虚血になる「狭心症」や「心筋梗塞」でも、典型的な胸の痛み以外に、肩に痛みが出る場合があります。糖尿病、高血圧、脂質異常症、喫煙などの動脈硬化の危険因子がある方、高齢の方は、かかりつけ医や内科医にまず相談し、心臓に起因する痛みでないかどうか、診てもらいましょう。
五十肩を予防するには?
五十肩の危険因子として、糖尿病、脂質異常症、甲状腺疾患、デスクワークなどが挙げられており、運動不足の関与があると考えられています。40-50代以降の運動不足は、生活習慣病*やロコモーティブ・シンドローム**にも繋がっていきます。生活習慣を見直し、運動習慣をつけるようにしましょう。
*生活習慣病:食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣がその発症に関与する症候群(がん・心臓病・脳卒中・糖尿病・COPD(慢性閉塞性肺疾患)など)を指す。日本人の死因の約6割を占めている。
**ロコモーティブシンドローム:筋肉・骨格など運動器の障害(筋力低下、骨粗鬆症、骨折など)により、要介護になるリスクの高い状態になること。
執筆者
半下石 美佐子(はんがいし みさこ)
日本橋室町三井タワー ミッドタウンクリニック 内科・循環器内科医師
筑波大学医学専門学群卒業。横須賀米海軍病院インターン、東京大学第一内科研修ののち、東京大学第一内科入局。国立国際医療センター循環器レジデント修了後、東京大学第一内科および東京大学循環器内科助手として臨床と研究に従事。2000年より三菱電機本社診療所副所長、2014年三菱電機本社健康増進センター長。2020年4月より日本橋室町三井タワー ミッドタウンクリニック勤務。
【認定資格】
日本内科学会 総合内科専門医
日本循環器学会 循環器専門医
日本東洋医学会 漢方専門医
日本医師会 認定産業医
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