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コラム

2021.06.01
病気 人間ドック・健診

知っているようで知らない『腫瘍マーカー検査』ってどんな検査?

健康状態を詳しく調べることができる人間ドックには、さまざまな検査項目があります。中には検査項目の内容や検査方法がよく分からないという方も多いと思います。今回は人間ドックの検査項目のうち、がんの発見に有用な腫瘍マーカーについて解説できればと思います。これから受診する方は検査前の基礎知識としてご覧ください。

腫瘍マーカーとは

腫瘍というものは、体内の細胞の一部が突然変異して増殖し、しこりのようになった状態をいい、良性と悪性があります。悪性のものが一般的に"がん"と呼ばれています。体内にがんができると、その種類によっては健康な時にはほとんど見られない特殊な物質が作られ血液中に現れることがあります。この血液中に現れた物質を「腫瘍マーカー」といいます。そしてこの腫瘍マーカーのチェックをする検査が「腫瘍マーカー検査」です。

体内にがんが発生すると、通常変化しないはずの腫瘍マーカーの数値が異常値になります。ただし、腫瘍マーカーの結果が高値であるからといって、がんであるとは判断できません。あくまでひとつの判断材料であるとされています。必ずしもがん(悪性腫瘍)で高くなるわけではなく、良性腫瘍や膵炎、胆嚢炎、胆管炎などの炎症性疾患や、胆石症、肝炎、糖尿病、気管支炎、気管支拡張症、子宮内膜症など、がん以外の病気でも上昇することがあります。つまり、「がんであるときにしか産生されない物質」ではなく、がん以外の病気でも上昇することがあります。また、がんだとしてもどの臓器にできたか判断することまではできません。そのため、腫瘍マーカーは検査の補助的手段として、また治療効果の判定に用いられることが一般的です。

腫瘍マーカー検査は採血のみで実施できるため、体への負担が少なく手軽にできる検査です。当クリニックではいくつかの腫瘍マーカーが人間ドックのコースに標準で入っています。また健診のオプションで追加することも可能です。気になる疾患に該当する腫瘍マーカー検査を追加し、CT検査や内視鏡検査などの他の検査と組み合わせて、がんの早期発見を目指すことをおすすめします。

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人間ドックで検査できる、腫瘍マーカーの種類

当クリニックが実施している腫瘍マーカー検査を例に一部紹介します。

胃がん・大腸がん・肺がんのリスク発見に有用な「CEA」

CEAは胎児の消化器組織にあるたんぱく質の一種で、成人の場合、消化器がん(大腸・直腸・胃)・肺がん・乳がん・膵臓がん・子宮がんに特異性がでる腫瘍マーカーです。一般的にCEAが高い、といわれる基準値は、5.0ng/mlとされています。ただし慢性肝炎、糖尿病や高齢者の方に高い値が出やすく、また喫煙量に比例して上昇しますので、長期喫煙者の方は受診の際には注意が必要です。

膵がん・胆のうがん・胆管がんのリスク発見に有用な「CA19-9」

CA19-9は膵管や胆管などをはじめ、消化管や気管支腺、子宮内膜などに多く存在するたんぱく質です。消化器がんの中でも、とくに膵臓・胆のう・胆管に特異性がでる腫瘍マーカーです。一般的にCA19-9が高いといわれる基準値は37ng/mlとされています。消化器がんの他に子宮体がん、卵巣がん、肺がんでも高くなることがあり、良性疾患では膵炎、胆嚢炎、胆管炎や、胆石症、肝炎、糖尿病、気管支炎、気管支拡張症、子宮内膜症など、がん以外の病気でも高い値を示すことがあります。また、日本人の約10%に存在するルイス式血液型というものが陰性の人では、がんがあるにもかかわらず上昇しない、偽陰性を示すことから腫瘍マーカーとして利用できないことも知っておくとよいと思います。

男性特有の前立腺がんリスクの発見に有用な「PSA」

PSA検査は前立腺がんを早期発見するために有用な検査です。がんや炎症により前立腺組織が壊れると、PSAが血液中に増加します。一般的にPSAが高いといわれる基準値は4ng/mlとされています。PSAが高い場合に考えられる疾患は前立腺がん、前立腺肥大症、前立腺炎などを疑います。

卵巣がん・子宮頸がん・子宮体がんのリスクの発見に有用性が高い「CA125」

CA125は卵巣がん、子宮体がんに特異性がでる腫瘍マーカーです。そのほか子宮内膜症、子宮筋腫、良性卵巣嚢腫にも反応します。そのため、CA125は女性特有の疾患リスクに幅広く対応する腫瘍マーカーといわれています。一般的にCA125が高いといわれる基準値は35 U/ml 以下とされています。CA125が高い場合に考えられる疾患は卵巣がん、子宮体がん以外に卵巣がん、子宮がん、肝臓がん、すい臓がん、胆管のうがんなどがあります。子宮筋腫、子宮内膜症などです。
またCA125は女性ホルモンのエストロゲンという物質によって生成が促されるため、生理(月経)時に上昇する性質があり、なかには異常値の範囲まで上昇するケースもあります。また、妊娠中にも初期の頃を中心に上昇します。このように、CA125はエストロゲンの作用を受けやすく、月経中や妊娠中は正確な結果を判定できないこともあるため、生理中の検査は避けたほうがよいとされています。また、不妊治療などで女性ホルモンが含まれる薬剤を服用している人も、検査前にその旨を伝えることが大切です。

いかがでしたか。最初にお伝えしましたが、腫瘍マーカーの結果が高値であるからといって、必ずしもがんが存在しているとは限らないのです。大切なのは、腫瘍マーカーで「E:要精密検査」という 結果が返ってきたら、まずは医療機関を受診し、精密検査を受けるということ。そこで、血液検査やレントゲン、CT、超音波検査などの検査を行い、はじめて診断がつきます。

当クリニックのオリジナル人間ドックは全てのコースに腫瘍マーカーが標準セットされていますし(コースにより腫瘍マーカーの種類は異なります)、オプション検査で追加することも可能です。また、受診後の二次検査やアフターフォローも一貫して承ります。さらに詳しい検査や治療が必要な場合は、専門医療機関や提携先の医療機関をご紹介いたします。検査について質問などあればどうぞお気軽にご相談ください。

●当クリニックオリジナル人間ドックはこちら>>
●腫瘍マーカーのオプション一覧はこちら>>

監修者プロフィール

松本 健史
日本橋室町三井タワー ミッドタウンクリニック 内科・消化器内科医師
1997年順天堂大学医学部卒業
順天堂大学医学部付属順天堂医院で研修後、東京女子医科大学消化器病センター内科医療錬士へ入局。東京女子医科大学消化器病センター内科 助手、順天堂大学練馬病院 助教を経て順天堂大学医学部消化器内科学講座 准教授、東京女子医科大学消化器内科学 非常勤講師(兼任)を務める。
2021年4月より日本橋室町三井タワー ミッドタウンクリニック勤務。

【認定資格】
日本内科学会 認定内科医
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医・指導医・関東地方会評議員
日本内視鏡学会 本部学術評議員
日本消化器病学会 消消化器病専門医・指導医・関東地方会評議員
日本消化管学会 胃腸科専門医
日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医

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