コラム
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2021.06.24
病気 人間ドック・健診 外来診療
胃がんのリスクが血液検査でわかる!?胃がんリスク検査(ABC分類)とは?
人間ドックや健診で胃の検査を受ける時、バリウムや内視鏡(胃カメラ)は苦しそう、時間もかかるしやりたくないなと躊躇をする方も多いのではないでしょうか。胃がんリスクの診断には、血液検査で実施する「胃がんリスク検査(ABC分類)」という方法もあります。胃がんの直接的な発見にはつながりませんが、胃の健康状態を確認して将来的な病気のリスクを診断することができる検査です。今回は胃がんリスク検査(ABC分類)について解説します。
胃がんと深い関係のあるピロリ菌
胃がんの原因は、ヘリコバクター・ピロリ(以下、ピロリ菌)が深く関係しています。ピロリ菌が胃の中に住みつくことによっておこる胃の粘膜の荒れ=萎縮性胃炎、が胃がんの多くを引き起すといわれています。
ピロリ菌に感染したかどうかは、血液や尿でピロリ菌の抗体を調べることにより簡単にわかります。また、萎縮性胃炎の有無についても、血液中のペプシノーゲンという物質を測定することにより、バリウム検査や内視鏡(胃カメラ)での観察をしなくてもわかるようになりました。
胃がんリスク検査(ABC分類)とは?
胃がんリスク検査(ABC分類)では、血液検査でピロリ菌感染の有無とペプシノーゲン値による胃の萎縮度の2つを測定し、どのくらい胃がんになりやすい状態にあるかをA、B、C、Dに分類し、判定します。
胃がんリスク検査(ABC分類)
- 1:認定NPO法人 日本胃がん予知・診断・治療研究機構(2019年6月)より改変
- 2:GHN(Gastro-Health Now)1号 2008.1.1
- 3:Kamada T et al. Aliment Pharmacol Ther 21:1121.2005
- 4:日本ヘリコバクター学会ガイドライン2016改訂版
- 5:GHN増刊号 2016.9.15
- 6:Milki K. Proc Jpn Acad Ser B Biol Sci 87:405.2011
- 7:ラテックスキット(GHN58号. 2019.5.1)
- 8:自覚症状のある人、過去に画像診断を受けたことがない人は医師と相談(GHN 22号:2012.10.1)
A群はピロリ菌感染がなく胃粘膜の萎縮もありません。この群からはほとんど胃がんが見つからず、他の胃の病気になる危険性も低いと考えられます。そのため内視鏡検査は原則推奨せず、となっていますが胃がんの発生率はじつはゼロではありません。近年ピロリ菌感染陰性の胃がんも報告されており、また、逆流性食道炎や食道がん、十二指腸の病気、など胃以外の病気のリスクがないという訳でもありません。そのため初回は内視鏡検査を受け、その結果にあわせて定期的に胃内視鏡を受けるようにしてください。
B群はピロリ菌感染の可能性があります。他の検査法でピロリ菌に現在感染しているのか、過去の感染かを診断し、現在の感染が確定した場合ピロリ菌の除菌が必要です(上図ピロリ菌除菌の項を参照下さい)。胃粘膜の萎縮は軽度ですが、1年間の胃がん発生頻度予測は1000人に1人ほどあり、また胃潰瘍・十二指腸潰瘍などの病気のリスクもありますので、自覚症状がなくても定期的に、少なくとも2年に1度は内視鏡(胃カメラ)検査を受けるようにしてください。
C群も他のピロリ菌検査陽性の場合、ピロリ菌の除菌が必要です。胃粘膜の萎縮は中等度に進んでおり、1年間の胃がん発生頻度予測は500人に1人ほどに上昇していますので、毎年内視鏡(胃カメラ)検査を受けるようにしてください。
D群は高度に胃粘膜が萎縮しており、1年間の胃がん発生頻度予測は80人に1人と最も胃がん発生リスクが高い群ですので、毎年内視鏡(胃カメラ)検査を受けるようにしてください。D群も他のピロリ菌検査陽性の場合はピロリ菌の除菌が必要ですが、胃粘膜の萎縮の進行によりピロリ菌が生息する粘膜が無くなるとピロリ菌がいなくなり、ピロリ菌検査が陰性になることもあります。その場合にはピロリ菌は胃の中に生息していませんので除菌の必要はありません。
- ※ピロリ菌の除去治療を受けた方は、除菌判定の結果に関わらず、E郡(除菌郡)として判定されます。ピロリ菌除去後は胃がんになるリスクは除菌前に比べ約3分の1に低下しますが、決してゼロになるわけではありません。また1年間の胃がん発生頻度予測は500人に1人ほどありますので、除菌後も定期的な内視鏡検査が必要です。
まとめると、胃がんのリスクは、D群>C群>B群>A群の順に高くなると理解すると良いでしょう。
ここで注意が必要なのが、胃がんリスク検査(ABC分類)はあくまでも胃粘膜の萎縮の有無、ピロリ菌感染の有無を確認し、胃がんのリスクが高いかどうかを調べる検査であり、胃がんそのものを見つける検査ではないという事、バリウム検査や内視鏡(胃カメラ)検査が不要という訳ではないということを覚えておきましょう。
バリウムや内視鏡(胃カメラ)に抵抗があるという方に
いかがでしたか?胃カメラやバリウム検査に抵抗があるという方は、まず胃がんリスク検査(ABC分類)を受けて、精密検査を受ける必要があるかどうかを判断してみてはいかがでしょうか?
当クリニックのオリジナル人間ドックでは、ご希望の方は胃の検査(胃X線検査)を胃がんリスク検査(ABC分類)に無料で変更が可能です。また、人間ドック・健康診断のオプション検査としても5,500円(税込)で追加が可能です。
検査は少量の採血で終了。検査時間も他の採血と同じタイミングでおこないますので、ほとんどかかりません。結果発送は、約3週間後に人間ドック・健診結果と共に郵送にてお知らせします。
※検査内容によっては遅れる可能性がありますので、予めご了承ください。
また、当クリニックは外来も併設しています。精密検査が必要な場合、検査結果をもとに二次検査のフォローおよび、ピロリ菌の除菌治療も可能です。検査について詳しく知りたい方、ご不安な方はいつでもご相談ください。
●当クリニックオリジナル人間ドックはこちら>>
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●オプション一覧はこちら>>
監修者プロフィール
松本 健史
日本橋室町三井タワー ミッドタウンクリニック 内科・消化器内科医師
1997年順天堂大学医学部卒業
順天堂大学医学部付属順天堂医院で研修後、東京女子医科大学消化器病センター内科医療錬士へ入局。東京女子医科大学消化器病センター内科 助手、順天堂大学練馬病院 助教を経て順天堂大学医学部消化器内科学講座 准教授、東京女子医科大学消化器内科学 非常勤講師(兼任)を務める。
2021年4月より日本橋室町三井タワー ミッドタウンクリニック勤務。
【認定資格】
日本内科学会 認定内科医
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医・指導医・関東地方会評議員
日本内視鏡学会 本部学術評議員
日本消化器病学会 消消化器病専門医・指導医・関東地方会評議員
日本消化管学会 胃腸科専門医
日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医
人間ドックや健診で胃の検査を受ける時、バリウムや内視鏡(胃カメラ)は苦しそう、時間もかかるしやりたくないなと躊躇をする方も多いのではないでしょうか。胃がんリスクの診断には、血液検査で実施する「胃がんリスク検査(ABC分類)」という方法もあります。胃がんの直接的な発見にはつながりませんが、胃の健康状態を確認して将来的な病気のリスクを診断することができる検査です。今回は胃がんリスク検査(ABC分類)について解説します。
胃がんと深い関係のあるピロリ菌
胃がんの原因は、ヘリコバクター・ピロリ(以下、ピロリ菌)が深く関係しています。ピロリ菌が胃の中に住みつくことによっておこる胃の粘膜の荒れ=萎縮性胃炎、が胃がんの多くを引き起すといわれています。
ピロリ菌に感染したかどうかは、血液や尿でピロリ菌の抗体を調べることにより簡単にわかります。また、萎縮性胃炎の有無についても、血液中のペプシノーゲンという物質を測定することにより、バリウム検査や内視鏡(胃カメラ)での観察をしなくてもわかるようになりました。
胃がんリスク検査(ABC分類)とは?
胃がんリスク検査(ABC分類)では、血液検査でピロリ菌感染の有無とペプシノーゲン値による胃の萎縮度の2つを測定し、どのくらい胃がんになりやすい状態にあるかをA、B、C、Dに分類し、判定します。
胃がんリスク検査(ABC分類)
- 1:認定NPO法人 日本胃がん予知・診断・治療研究機構(2019年6月)より改変
- 2:GHN(Gastro-Health Now)1号 2008.1.1
- 3:Kamada T et al. Aliment Pharmacol Ther 21:1121.2005
- 4:日本ヘリコバクター学会ガイドライン2016改訂版
- 5:GHN増刊号 2016.9.15
- 6:Milki K. Proc Jpn Acad Ser B Biol Sci 87:405.2011
- 7:ラテックスキット(GHN58号. 2019.5.1)
- 8:自覚症状のある人、過去に画像診断を受けたことがない人は医師と相談(GHN 22号:2012.10.1)
A群はピロリ菌感染がなく胃粘膜の萎縮もありません。この群からはほとんど胃がんが見つからず、他の胃の病気になる危険性も低いと考えられます。そのため内視鏡検査は原則推奨せず、となっていますが胃がんの発生率はじつはゼロではありません。近年ピロリ菌感染陰性の胃がんも報告されており、また、逆流性食道炎や食道がん、十二指腸の病気、など胃以外の病気のリスクがないという訳でもありません。そのため初回は内視鏡検査を受け、その結果にあわせて定期的に胃内視鏡を受けるようにしてください。
B群はピロリ菌感染の可能性があります。他の検査法でピロリ菌に現在感染しているのか、過去の感染かを診断し、現在の感染が確定した場合ピロリ菌の除菌が必要です(上図ピロリ菌除菌の項を参照下さい)。胃粘膜の萎縮は軽度ですが、1年間の胃がん発生頻度予測は1000人に1人ほどあり、また胃潰瘍・十二指腸潰瘍などの病気のリスクもありますので、自覚症状がなくても定期的に、少なくとも2年に1度は内視鏡(胃カメラ)検査を受けるようにしてください。
C群も他のピロリ菌検査陽性の場合、ピロリ菌の除菌が必要です。胃粘膜の萎縮は中等度に進んでおり、1年間の胃がん発生頻度予測は500人に1人ほどに上昇していますので、毎年内視鏡(胃カメラ)検査を受けるようにしてください。
D群は高度に胃粘膜が萎縮しており、1年間の胃がん発生頻度予測は80人に1人と最も胃がん発生リスクが高い群ですので、毎年内視鏡(胃カメラ)検査を受けるようにしてください。D群も他のピロリ菌検査陽性の場合はピロリ菌の除菌が必要ですが、胃粘膜の萎縮の進行によりピロリ菌が生息する粘膜が無くなるとピロリ菌がいなくなり、ピロリ菌検査が陰性になることもあります。その場合にはピロリ菌は胃の中に生息していませんので除菌の必要はありません。
- ※ピロリ菌の除去治療を受けた方は、除菌判定の結果に関わらず、E郡(除菌郡)として判定されます。ピロリ菌除去後は胃がんになるリスクは除菌前に比べ約3分の1に低下しますが、決してゼロになるわけではありません。また1年間の胃がん発生頻度予測は500人に1人ほどありますので、除菌後も定期的な内視鏡検査が必要です。
まとめると、胃がんのリスクは、D群>C群>B群>A群の順に高くなると理解すると良いでしょう。
ここで注意が必要なのが、胃がんリスク検査(ABC分類)はあくまでも胃粘膜の萎縮の有無、ピロリ菌感染の有無を確認し、胃がんのリスクが高いかどうかを調べる検査であり、胃がんそのものを見つける検査ではないという事、バリウム検査や内視鏡(胃カメラ)検査が不要という訳ではないということを覚えておきましょう。
バリウムや内視鏡(胃カメラ)に抵抗があるという方に
いかがでしたか?胃カメラやバリウム検査に抵抗があるという方は、まず胃がんリスク検査(ABC分類)を受けて、精密検査を受ける必要があるかどうかを判断してみてはいかがでしょうか?
当クリニックのオリジナル人間ドックでは、ご希望の方は胃の検査(胃X線検査)を胃がんリスク検査(ABC分類)に無料で変更が可能です。また、人間ドック・健康診断のオプション検査としても5,500円(税込)で追加が可能です。
検査は少量の採血で終了。検査時間も他の採血と同じタイミングでおこないますので、ほとんどかかりません。結果発送は、約3週間後に人間ドック・健診結果と共に郵送にてお知らせします。
※検査内容によっては遅れる可能性がありますので、予めご了承ください。
また、当クリニックは外来も併設しています。精密検査が必要な場合、検査結果をもとに二次検査のフォローおよび、ピロリ菌の除菌治療も可能です。検査について詳しく知りたい方、ご不安な方はいつでもご相談ください。
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監修者プロフィール
松本 健史
日本橋室町三井タワー ミッドタウンクリニック 内科・消化器内科医師
1997年順天堂大学医学部卒業
順天堂大学医学部付属順天堂医院で研修後、東京女子医科大学消化器病センター内科医療錬士へ入局。東京女子医科大学消化器病センター内科 助手、順天堂大学練馬病院 助教を経て順天堂大学医学部消化器内科学講座 准教授、東京女子医科大学消化器内科学 非常勤講師(兼任)を務める。
2021年4月より日本橋室町三井タワー ミッドタウンクリニック勤務。
【認定資格】
日本内科学会 認定内科医
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医・指導医・関東地方会評議員
日本内視鏡学会 本部学術評議員
日本消化器病学会 消消化器病専門医・指導医・関東地方会評議員
日本消化管学会 胃腸科専門医
日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医
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